MMAのためのVBT(Velocity Based Training)完全ガイド
VBT(Velocity Based Training)は、重さではなく動作の速さを基準に負荷を管理する最新トレーニング手法。MMA選手向けにスピード・爆発力・筋肥大をどう鍛えるか、機材・メニュー・年間の使い分けまで分かりやすく解説します。
──スピード・爆発力・筋肥大をすべて管理できる方法──
MMAは striking、レスリング、グラップリングを組み合わせた複合スポーツであり、 スタミナ、筋力、パワー、反応速度、判断力、技術など多面的な能力が求められる。
その中でも近年、欧米の強豪ジムやUFCパフォーマンス・インスティテュートを中心に 導入が進んでいるのが VBT(Velocity Based Training:速度を基準にしたトレーニング) だ。
この記事では、
- VBTとは何か
- なぜMMAに最適なのか
- スピードと筋肥大の両立方法
- VBTを行うための機材
- 具体的なトレーニング方法
- 年間での使い分け方
を、最新の研究・実践知に基づいて解説する。
📘 参照文献
-
Huldi, F.J. & Cisar, C.J. (2023)
Developing an Annual Training Program for the Mixed Martial Arts Athlete, Strength & Conditioning Journal.
-
Will Morrill (2018)
The Combat Sports Strength and Conditioning Manual: Minimalist Training for Maximum Results.
-
Velocity-Based Training for Combat Sports(技術まとめ資料)
🎯 1. VBTとは何か?
VBTは「重さではなく、動作の速さ(Velocity)を基準にして負荷を調整する方法」。
従来のウェイトトレーニングは
“最大重量(1RM:1回だけ挙がる重さ)の〇%”
という重さ基準だが、VBTは逆。
- どれだけ速く動かせるか
- どれだけ速度が落ちたか(=疲労の度合い)
を見てセットを管理する。
🥊 2. なぜMMAにVBTが最適なのか?
■ 2-1 試合を決めるのは「8〜12秒の爆発」
Huldi & Cisar(2023)の分析では、
全MMA試合の77%が、8〜12秒の高強度アクションで決まる
というデータがある。
つまり勝敗を決めているのは、
- パンチの初速
- タックルの踏み込み
- スクランブル時の反応速度
- カウンターの瞬発
こうした 神経系の爆発力。
これを鍛えるには、
軽い重量で高速動作を反復するVBTが最適
となる。
■ 2-2 技術練習と干渉しにくい(ここが最重要)
格闘技の選手は毎日、
- スパー
- パッド
- レスリング
- グラップリング
などで疲労が溜まりやすい。
重いウェイトをやりすぎると疲労が増えて
技術練習の質が落ち、怪我のリスクも増える。
Will Morrill(2018)は、
「格闘技におけるS&Cは“最小限の刺激で最大の成果を得るべき”」
と述べており、VBTはその哲学と完全に一致する。
軽い重量を素早く動かすため、
疲労が少なく技術練習との両立がしやすいのだ。
■ 2-3 当日のコンディションに合わせて自動調整できる
減量中、スパー明け、疲労が強い日。
従来の「重さ基準」では負荷設定が難しいが、VBTはこう考える。
- 動きが速い → 調子が良い
- 動きが遅い → 疲労している
- 遅くなったら(速度低下)そこで終了
これにより、
自動でその日の最適強度に調整される。
⚡ 3. VBTはスピードだけでなく筋肥大にも使える
ここが最も誤解されやすい部分だ。
実はVBTは「スピード専用」ではなく、
速度低下(Velocity Loss)をどこまで許容するかによって目的が変わる。
研究ベースでは次のように整理できる:
| 目的 | セット中に許容する速度低下 | 効果 |
|---|---|---|
| 瞬発力・スピード向上(試合期) | 10%以内 | 反応速度UP/爆発力UP/疲労が少ない |
| 筋肥大(オフ期・準備期) | 20〜40% | 筋肉が大きくなる/身体の強度UP |
| 最大筋力(Max Strength) | 重い重量+速度監視 | ゆっくり挙がる重量の最大値UP |
このように、
VBTはスピードも筋肥大も、使い方次第でどちらにも使える。
🧰 4. VBTを始めるための機材
VBTは“速度が見えれば”成立するため、用途に合わせて選べる。
● 4-1 本格派(プロ選手向け)
Vitruve(速度計測デバイス)
- バーベルの動作速度を正確に計測
- スマホでVelocity Lossが見える
- 神経系の疲労管理に最適
● 4-2 中価格(アプリベース)
スマホアプリ(例:MyLiftなど)
- カメラ映像から速度を推定
- 正確性は落ちるが十分実用的
- 初期導入には最適
● 4-3 予算ゼロ(体感VBT)
実は機材なしでも可能。
やり方はこうだ:
- 軽い重量を使う(最大重量の30〜50%)
- できる限り速く動かす
- 動きが遅くなった瞬間=セット終了(速度低下10%以内)
これだけで十分VBTになる。
🏋️ 5. 実際のVBTメニュー(初心者でもできる)
● スピード・スクワット
目的:パンチの踏み込み・タックル初速
重量:軽め(最大重量の30〜50%)
やり方
- 軽い重量でセット
- しゃがんで立ち上がる動作を最大速度で
- 2〜3回
- 遅くなったら終了
- 3〜5セット
● ジャンプ・デッドリフト(トラップバー)
目的:レスリング時の立ち上がり、スクランブル速度
重量:20〜30%
やり方は:
- 立ち上がる勢いで“ふわっと”ジャンプ
- 3〜5回 × 3セット
- 動作が重くなったら終了
● メディシンボール回転投げ
目的:打撃の回転パワー(KO力の源)
やり方:
- 2〜4kgのボールを持つ
- 腰をひねって壁に向かって全力で投げる
- 左右3回 × 3セット
💪 6. 筋肥大が必要な場合のVBT(準備期限定)
● 筋肥大スクワット
- 最大重量の60〜75%
- 6〜10回 × 3セット
- 速度低下20〜30%を許容 (疲労OK)
● 筋肥大ベンチ
- 最大重量の60〜70%
- 6〜8回 × 3セット
- 速度低下40%まで許容
● デッドリフト(筋肥大+最大筋力)
- 最大重量70〜85%
- 3〜5回
- 3セット
- 動作速度は落としすぎない(フォーム優先)
📅 7. MMA選手に最適な週の例
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月 | スピード下半身(スクワット) |
| 火 | 技術(軽スパー) |
| 水 | ジャンプデッド |
| 木 | レスリング |
| 金 | 上半身スピード |
| 土 | プライオ+反応速度 |
| 日 | 休養 |
🔚 まとめ
- VBTは重さではなく“速さ”を基準にするトレーニング
- MMAは 神経系・スピード・爆発力 が勝敗を決めるスポーツ
- 技術練習との干渉が少ないため格闘技と相性が良い
- 速度低下の許容範囲を調整すれば 筋肥大も可能
- 試合期は速度低下10%以内
- 準備期は20〜40%の速度低下で筋肥大も狙える
MMAの“動ける身体”づくりのためには、
従来の「重さ基準」だけでは不十分。
**“速さ基準”のVBTを取り入れることで、
パンチ速度、タックル初速、スクランブル力は大きく変化する。**