RIZIN LANDMARK 12 in KOBE JTT選手の試合結果と感想
RIZIN LANDMARK 12 in KOBEでのJTT勢を全試合レビュー。伊澤星花vs大島沙緒里、萩原京平vs秋元強真、鹿志村仁之介vs安井飛馬を技術視点で解説し、要点をわかりやすく総括します。
鹿志村仁之介 vs. 安井飛馬
計量
両者クリア。鹿志村はいつも通りの仕上がり。 安井は初のバンタム級だが、余分な脂肪が落ちた分だけの減量に見え、コンディション良好そうに見える。適性階級はやはりバンタムだと感じた。
試合展開
1R
センターを取る安井、外をサークリングする鹿志村でスタート。 安井は緩急からの三日月蹴りをヒット。鹿志村はシングルレッグでテイクダウン(TD)を狙うが、安井は強めのパウンドを当てつつ踏ん張る。
シングルからケージレスリングへ移行。安井は小手(ウィザー)を巻いてTDを抑止し、ケージ際でパウンドを重ね、鹿志村の顔面に腫れが出る。 それでも鹿志村は食い下がり、いったん背後へ回るがフックは作らせてもらえず、オモプラッタ→アーム絡みへつなぎ、さらに腕十字へ。安井は持ち上げるような“バスター”で脱出を図り、最終的に足を使って腕を外し凌ぐ。
以後はクローズドガードで小康状態のまま終了。両者とも消耗の大きいラウンド。
2R
互いに回復を図る静かなラウンド。 安井はジャブとストレートで前圧を継続、鹿志村はローなどで応じる。
3R
鹿志村がスタンドで圧を強め、TD成功。 ハーフからマウントへ上がるタイミングで、安井は小手を巻いて進行を阻止。鹿志村はバックに回ってフックを狙うが、安井がこれも防いでスタンドへ戻す。
終盤は互いに手足を出しつつも大きな山場はなく、ラスト10秒で安井がやや攻勢に出てゴング。
感想
勝敗の鍵はやはり1Rの評価。 安井はパウンドで明確なダメージを示し、鹿志村は複数のサブミッションで“極めの脅威”を作った。ここをどちらにより高く点けるかで試合の色が変わる。最終的には、ジャッジがサブミッションの決定機を比較的高く評価したと見るのが自然で、僅差で鹿志村に傾いた印象だ。
2Rは小休止、3Rは鹿志村が主導してTDを取り、安井は要所で凌いで立たせる――という構図。終盤のペース配分は、鹿志村は攻め切る体力が薄く、安井はわずかに余力を残していたように見えたが、リードを意識したのか大きくは踏み込まず、最後の短い打ち合いにとどまった。
技術面では、安井はグラウンドの防御とパウンドの威力を示しつつ、リーチを活かしたジャブや三日月蹴りという新武器も見せた。一方で**“見過ぎる”時間帯**は依然として課題。JTTの環境的に、秋元や朝倉兄弟らスタンド巧者と日常的に当たることで、相手の打撃に過度なリスペクト(幻想)を抱きがちという難しさはあるかもしれない。
ただ、RIZINバンタムの中でもこれ以上に極めを持つグラップラーは多くないと仮定すれば、今後は安井の強みであるTDとトップからのパウンドがより活きやすいマッチアップが増えるはずだ。今回は鹿志村の壁を越えられなかったが、この二人の“グラップラー・ライバル関係”は続くだろうし、互いにバンタム戦線を登っていき、20代後半〜30歳前後での再戦が見たいと思わせる内容だった。
安井は“無敗”の看板が外れた分、むしろ自由にチャレンジできる。減量や水抜き等も含めてバンタムでの最適解を詰めるには試合数が必要だし、スタンドの伸びが確認できた今、スタンドとレスリングのミックスはさらに良くなる。今後の成長が楽しみな敗戦だった。
伊澤星花 vs. 大島沙緒里
計量
伊澤はかなりバキバキの仕上がり。伊澤チャレンジ生たちとHALEOでのトレーニング効果がうかがえる。 大島は例年どおり、ほぼ減量なしと思われる。 並ぶと、フレームとリーチに明確な差。
試合展開
1R
中央を取った伊澤が、リーチ差を活かしたジャブで主導。大島はフェイントと前蹴りで一方的な展開を拒みつつ、ビッグショットかTDの機会を伺う。入れ替わりのタイミングに裏拳も用意している様子(対策)。
それでも伊澤は前蹴りとジャブ、2-1(ストレート→ジャブ)などのコンビネーションでプレッシャーを継続。大島は前蹴りを掴んで前進の糸口を作ろうとするが不発。
大島のミドルの戻りに伊澤がストレートを合わせ、フラッシュダウン。オープンガード上からパウンドを落とすも、深追いはしない。
以降も伊澤が前圧。自らのキックが空ぶった瞬間を大島が狙うが、そのカウンターに対しても伊澤はパンチで迎撃。 大島はジャブに合わせてシングルに入るが体勢が悪く、伊澤は崩れない。大島が立ち直る隙に伊澤は打撃を追加。
大島はスプリント気味に距離を詰め、パンチからのクリンチを狙うが、伊澤はステップワークで外す。 伊澤は大島の間合いの外から当て続け、ケージ際に詰めてパンチをまとめ、首相撲からの膝。リーチ差を押し付ける形で1R終了。
2R
流れは変わらず、伊澤が前圧とパンチでコントロール。 ケージに詰めてパンチの連携から首相撲で膝。大島は逃げ際に足をかけてバランスを崩し、初めてのケージレスリングへ。伊澤はニーシールドで対処。
ここで伊澤は右手で大島の手をコントロールしつつ、ニンジャチョークをセット。大島は際どく手を差し入れて防御。極まらないと判断した伊澤は、そのままケージへ押し込み、再び首相撲の膝へ移行。
以降は伊澤がケージ際でオフェンス。大島は左で小手(ウィザー)を巻きつつ、ニーシールドで耐える。ハンドファイトの攻防で伊澤はパウンドを落とし、外掛け気味のTDからバックへ。 フックを狙う伊澤に対し、大島は防御。立ち上がりかけたところを、伊澤は背後をキープしつつオープンガードに落とし込み、立ち上がり際にパンチを合わせて再びスタンドへ。
大島は無理にステップインしてクリンチへ持ち込むが、伊澤は首を取りにいく流れからフロントヘッドロック(前方コントロール)へ。ここで顔面に膝を重ね、隙を見てギロチンをセット。 回転してグラウンドへ引き込み、マウント・ギロチンへ移行。大島はなんとか解除するが、伊澤が上をキープ。サイド→ハーフへ移行しつつパウンド。 ラスト10秒、大島はパウンドを受けながらも足関節を狙いにいき、攻防のまま終了。
3R
伊澤が中央を取り、長いジャブで一方的に触る。 大島は決死のシングルレッグを試みるが遠く、伊澤がスプロールしてパウンド。オープンガードへ移行するも、深追いせず立たせる。
大島はなんとかクリンチを作ろうと突っ込むが、伊澤はステップで外し、パンチを当て続ける。 最後は大島がスクランブルで腕を狙うも、ポジションは作れず。伊澤のパウンドが入り、試合終了。
感想
伊澤王者が大島に“何もさせない”内容で実力差を証明。心を折りにいくような勝ち方だった。 スタンドで差をつけ、スクランブルの芽を摘み、仮にスクランブルになっても決してポジションを渡さない。今回は無理に極めを追わず、リーチという物理的優位を起点に戦略・戦術を組み立て、危なげなく勝ち切る設計だったと見える。
ただただ強い――その一言に尽きる。 そして大晦日のRENA戦を控え、「絶対に落とせない」状況ゆえに、きわめて堅実で、ミスのないゲームプランを貫いたのだろう。
萩原京平 vs. 秋元強真
計量
秋元はフェザー級ではいつも通り余裕がある。萩原もやや緩めのコンディション。 身長は秋元の方が高く、肩の位置の差がはっきりしている。体の厚みは断然萩原で、以前より肩回りの厚みが増している印象。
試合展開
開始直後から、前足が触れ合うようなボクシング距離での攻防。 前手同士の差し合いの中で、萩原はインロー(カーフ)を織り交ぜる。ただし主導権は秋元。ステップで逃げず下がらず、ボクシング技術で上回っていることを示したい意志が見える。
徐々に萩原がケージに詰められ、秋元がボディジャブからのオーバーハンドでファーストヒット。 萩原はジャブで押し返そうとするが、秋元のプレッシャーが勝る。
秋元はボディジャブと同じモーションからシングルレッグへ切り替え、ケージレスリングの展開に。両脚で相手の左脚を束ねてテイクダウン(TD)を狙うが、萩原は適切に対処。秋元は早めに見切りをつけ、離れ際にフックを差し込んでスタンドへ戻す。ここで秋元は「ケージ際でのTDは通りにくい」と判断したように見える。
続いて秋元がワンツー。萩原はツーに合わせたカウンターを狙うが、秋元の頭が動いていたため外れる。ただしタイミングは合っている。直後、秋元はタイミングを変えたワンツーでヒットを重ねる。
萩原はステップしながらの1-2-3を放つが、秋元はバックステップとヘッドスリップで回避。 再び秋元がプレッシャーをかけてケージに詰め、ボディジャブからのストレートがヒット。シングルレッグとボディジャブのモーションが近いため、萩原はTDD(テイクダウンディフェンス)を意識すると上が空きやすい状況だ。
秋元はそこからパンチでまとめるが、萩原もショルダーブロックを使いながらガードし、随時カウンター。 プレッシャーに対し萩原はストレートのダブルをヒットさせ、秋元は鼻血を流す。さらにボディストレートからフックのコンビネーション。秋元はブロックするが、腕越しでもダメージが通っていそうだ。
それでも秋元は引かない。萩原の「ジャブ→ストレート(ダブル)」には、バックステップで初弾を外し、2発目をヘッドスリップで回避して即座に対応。流血しながらも集中を切らさず、前手をつかみつつストレートを2本差し込む。萩原も前手フックを返してヒット。
一度距離を取った秋元に対し、萩原が追いかけてストレートを当てる。しかし秋元はサイドへ回り込みながら前進しストレートを再度ヒット。さらにケージに詰めてストレートを通す。萩原もジャブとストレートで押し返すが、圧をかけ続けるのは秋元。
秋元は左ボディ→右フック、さらにボディストレート。萩原も打ち返すが、主導権は依然として秋元。 ジャブ→ボディストレート→スイッチしてのストレートをヒットさせ、前手フックに対してはダッキングからボディフックの連係(朝倉海vs元谷を想起させるコンビネーション)。
萩原もプレッシャーに屈せずジャブを当て続け、致命打は許さない。 1R終盤、両者とも鼻骨にダメージの可能性。特に萩原は腫れが顕著で、折れている疑いが高い。左目の腫れも強く、視界に影響が出ているように見える(眼窩底骨折の可能性)。
2R。 立ち上がりは萩原がプレッシャー、秋元が下がる展開。すぐに秋元がシングルレッグでTDし、立ち上がり際を狙ってギロチン。萩原は回転で対処し、再びスタンドへ。
好機と見た萩原は圧を強めてワンツー、左右フックをまとめるが、秋元が丁寧にディフェンス。 秋元はわずかなレベルチェンジから左のオーバーハンド。萩原はダッキングで交わすが、返しのフックがヒット。左目の腫れで見えづらくなっている印象だ。続いて秋元はストレート→アッパーのコンビネーションを当てる。
それでも萩原は前進をやめず、至近距離の打ち合いに。ここで秋元は萩原のジャブにタイミングを合わせ、再びシングルレッグからTD。先ほどより良い形でサイドポジションへ。
立ち上がろうとする萩原に対し、秋元は足フックからボディトライアングル(四の字)を完成。そこからツイスターのセットに入るトラックポジションへ移行し、首を狙ってハンドファイト。萩原は左右のフェイントにも反応して首を守るが、トラックが深く脱出が難しい。
攻防の中で、秋元はトラック⇄ボディトライアングルを行き来しながらコントロール。萩原が四の字のままの想定で逃れようとしたところで、ツイスターの形が完成に近づく。
秋元は極め切らず、ツイスターの圧で上半身を固めてパウンド。トラックを維持したまま上を取り、パウンドを連打。萩原は脱出できず、秋元の連打によりレフェリーストップ。壮絶な一戦に終止符が打たれた。
感想
見直してみると、秋元の流血もあって一見は拮抗して見えるが、内容的には“ほぼ完勝”に近い出来だったと感じた。
常に前圧をかけ続け、対策と思われるボディジャブとシングルレッグのモーションを似せる仕掛けでTDDを引き出し、ボディジャブ→オーバーハンドといった連係へ接続。 「距離で外す/ガードする/ヘッドスリップでいなす」といったパンチディフェンスも的確で、ダウトベック戦を見据えて積み上げたであろうMMA用ボクシングの進化が際立っていた。
また、ケージ際でのTDが通りにくいと見るや早めに見切り、逆にケージ中央でのシングルなら通せる場面で合わせるなど、状況判断がクレバー。相手の“打ち気”が高いタイミングでのTD選択も冴えていた。 これだけ激しい内容でも、実際はきわめて戦略的に試合を運ぶ――信じ難いほど成熟した19歳だ。
年齢的にも、まだ2部練・3部練のハードワークを数年は十分にこなせる。この期間でどこまで伸びるのか、目が離せない。
一方の萩原は、フェザー級でもトップクラスのストライキングを持ち、威力・技術ともに高水準。レスリング/ケージワーク/グラウンドのディフェンスも悪くなかったが、シングル後のボディトライアングル(四の字)を許した局面には、まだ差を詰める余地がうかがえた。 とはいえ今回で評価が落ちたわけではない。TRIBE TOKYO MMAは確かに萩原に合った環境で、成長は見える。それ以上に秋元の伸びが上回っていた――という試合だった。
それにしても、秋元があれほど至近距離で打ち合うとは意外。 「撃ち合いは萩原有利」という前評判が多かった分、どこかで近距離の殴り合いへ誘われる(誘いに乗る)形になった可能性はあるが、結果としてスリリングで非常に見応えのある一戦になった。
総括
DEEPで2戦、RIZINで3戦と試合が続いたが、JTTは4勝1敗と非常に良い成績を収めた。 朝倉海の敗戦以降、JTTは黒星が続き、前回のDEEP浜松でようやく巻き返したばかり。ここを良い結果で乗り切れたのは大きい。
敗れた安井選手も、内容としては前向きに評価できる敗戦だった。プロは一度負けてからが本当の勝負であり、敗戦からの復活は人を惹きつける物語になる。
年末には伊澤 vs RENA、スーパーアトム級の“最後の1枚”となるカードが切られる。その後の伊澤選手の進路は不透明だが、この物語を勝利で締めくくってほしい。
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