王座陥落寸前 伊澤ダウン直後の攻防で何が起きていたのか?
RIZIN師走の超強者祭りの伊澤星花 vs RENA。フラッシュダウンから王座防衛へと繋がった数十秒の攻防を、足の使い方・重心・サブミッションの視点から徹底解説。なぜ試合は終わらなかったのかを読み解く。
なぜ、あれほど完璧なダウンを奪ったのに、試合は終わらなかったのか。
数年に及ぶ、バチバチの舌戦を繰り広げてきた因縁の両者によるこの一戦は、RIZIN10周年にふさわしい、記憶に残る試合だったと思います。
この試合は戦前の予想では、伊澤王者が挑戦者RENAを圧倒するという見方が大半でした。
しかし、RENA選手のステップインからの左フックが伊澤選手にクリーンヒット。伊澤選手はフラッシュダウンを喫し、日本女子格闘技史上最高クラスのアップセット目前という空気が会場を包みました。
それでも結果は、伊澤選手がダウン直後の攻防を制し、回復して立ち上がり、そこからはRENA選手を圧倒する展開での王座防衛。
**あの、ほんの数秒。
王座が揺らいだ“極限の瞬間”に、何が起きていたのか。**
結論として伊澤王者は日頃の練習のやり込みからなる技術と柔軟性でピンチを凌ぎました。
画像で追いながら見ていきたいと思います。
ダウンを奪われた瞬間

まずはダウンを奪われた瞬間。
おそらく伊澤選手は、フラッシュダウンによって意識が朦朧としている状態だったと思われます。
対するRENA選手は、立技出身選手に多く見られる「倒した瞬間にダウンを取ったと思い、ヒットアピールをしてしまう」動きが入り、追撃がわずかに遅れました。
この一瞬の間が、後の攻防に大きく影響します。
追撃のパウンド①

RENA選手が追撃のパウンドに入ります。
この時、伊澤選手の左手はパンチに反応していましたが、間に合わずクリーンヒットを受けています。ただし、右足を高く挙げた状態だったため、パウンドの軌道に若干の障害が生まれ、ダメージは浅めになっています。
追撃のパウンド②と「足の意味」

さらに次のパウンド。
ここでも伊澤選手の右足が障害となり、パウンドは深く入りません。
そして注目したいのが左足。
左足が明確に上がってきています。
この時点で意識がどこまで回復していたかは分かりませんが、
少なくとも
- 足を使ったディフェンス
- さらに次の展開(サブミッション)への準備
に入っていることは読み取れます。
重心が崩れる瞬間

RENA選手はさらにパウンドを狙いますが、伊澤選手が腰と足を持ち上げる体勢に入ったことで、RENA選手は重心を乗せすぎてしまい、片足が浮いてしまいます。
この状態では、安定したパウンドは打てません。
防御から主導権争いへ

さらにRENA選手がパウンドを狙いますが、伊澤選手は両足と左手を使った防御の体勢に完全に入っています。
女子選手の中でも特に伊澤選手は全身の柔軟性が高く、
ダウン直後の状態でもこの形を作れるのは大きな強みです。
ここまでの攻防を整理すると
このダウン直後の一連の攻防で、伊澤選手がやっていたことは、実はとてもシンプルです。
- 足を使ってパウンドの軌道を遮る
- 腰を浮かせて相手の重心を不安定にする
- サブミッションの可能性を見せて攻撃をためらわせる
「耐える」「しがみつく」ではなく、
防御しながら主導権を取り返しにいく動きでした。
腕十字へのプレッシャー

RENA選手が、伊澤選手の足が高く上がったことでパウンドを打ちづらくなり、位置を調整しようとした瞬間。
伊澤選手は、左手でRENA選手の頭を抱え、左足をRENA選手の頭部右側へ持っていき、腕十字のセットに入るプレッシャーをかけます。
サブミッションを警戒し仕切り直し


このプレッシャーに対し、RENA選手はサブミッションを強く警戒し、いったん脱出を選択しました。
回復の時間を作った王者の判断
この後、RENA選手はいわゆる「イノキアリ状態」を数秒挟んでから再度パウンドに入りますが、
伊澤選手は冷静に対応し、回復の時間を確保。そこから立ち上がり、試合の主導権を完全に握りました。
ダウンを奪われた直後、最も危険な時間帯を技術と判断でやり過ごしたことが、その後の一方的な展開につながったと言えるでしょう。
王者が王者であり続ける理由
日頃の練習での積み重ねがあるからこそ、
窮地に追い込まれた極限状態でも、正しい選択ができる。
**王者とは、常に有利な局面にいる者ではない。
最悪の瞬間に、最善の判断ができる者だ。**
この試合は、因縁や舌戦も含めて、
日本の女子格闘技史に残る最高峰の一戦だったと思います。
両者に、心からの拍手を。
👏👏👏👏👏👏👏👏👏